アーセナルの選手名鑑 :FB編

前回のCB編に続き今回はFB編です。それでは Here We Go !!

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3.フルバック

1)ベン・ホワイト

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2020年後半から翌年夏のD.ルイス退団に備えて右CBのスカウティングが行われました。そこで白羽の矢が立ったのがベン・ホワイト。2021年夏にDFラインの中心選手となるべく52Mポンドの移籍金でブライトンより加入。2021/22シーズンは右CB、翌2022/23シーズンは右FBにコンバートされてフル稼働しました。途中疲労を感じさせる時期もありましたが攻守両面で安定していた選手のひとりです。

昨シーズンはユース時代に経験していたとは言え、試合をこなすたびに攻め上がりのタイミングやサカとの連携を向上させ、シーズン後半にはペナルティエリア内に侵入して得点やアシストでも貢献、ポリバレントな能力を見せつけてくれました。右サイドからの低く美しい軌道のロングボールにも目を見張るものがあります。

審判から見えないところで相手選手を小突いたり相手サポーターを煽るやんちゃな側面を持ち合わせており、そこが女性ファンの心をくすぐるようです(笑)。カタールW杯ではイングランド代表に選出されるも、特殊な環境下での集団生活になじめずに途中離脱してしまいました。試合中に不用意に熱くならないのは好印象ですが、少しナイーブな性格を持ち合わせているのでしょうか。試合中にリーダーシップを発揮している感じもあまりしませんね。

今後の課題としては、やはり対人守備能力でしょうか。スピードは素晴らしいし、決して弱いというわけではないのですが、パワーや粘りに少し欠け、苦しい試合で後手をふむとプレーが消極的になるようです。来シーズンはCBに戻る可能性が取りざたされており、対人守備能力をもうワンランクアップ成長させてほしいですね。

 

2)ジンチェンコ

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勝利への強い意志をしめすチームのリーダーの一人。チームメイトが誰しも「ジンチェンコはクレイジー」とコメントするのが面白すぎます。ウクライナ代表のキャプテンもつとめ、戦禍の母国を救うためのチャリティー活動でも重要な役割を果たしています。

今シーズンは偽FBとしてビルドアップを支えました。狭いスペースでも逃げずにボールをもらい、相手選手のすき間に鋭いくさびのパスを連発します。コントロールやターンの技術に裏打ちされたプレス耐性を誇り、ボールを簡単に失わない反面、パス選択が強引で相手に引っ掛ける場面が少なくない印象も受けます。

フィジカル能力に特筆すべきものがないため、対人の守備能力や連戦となった場合の耐久性にも不安が残ります。2023/24シーズンはジャカ退団により中盤の守備力低下が予想されるため、DF陣もそれに合わせて序列が変わるでしょう。ジンチェンコが引きつづき左FBの一番手の座をキープできるかは注目ポイントの一つです。

 

3)キーラン・ティアニー

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2019年夏にセルティックから加わった真冬でも半袖半ズボンでトレーニングに臨むウォーリアー。加入直後のカップ戦で敗戦後にベンチに下がろうとするチームメイトにファンへのあいさつを促すなど一時は未来のキャプテンの呼び声が高かった選手です。

2019/20シーズンはパンデミックによるシーズン中断が明けてからチームに本格合流。可変3バックシステムの左WBまたは左CBとしてFA杯優勝に貢献しました。2020/21シーズンも大外を駆け上がってはクロスを上げ続け、戦術ティアニーとまで言われました。走力にものを言わせて強引に相手を剥がす能力やボックス内に蹴りこむクロスの精度は決して悪くありません。しかし プレーが単調で相手に読まれやすかったのも事実です。

2021/22シーズンは中盤に基本フォーメーションが433に移行すると大外を駆け上がる機会がめっきり減り、内側に絞ってプレーする機会が増えました。新しい役割を卒なくこなしてチームも好調を維持していましたが、4月に故障を隠してプレーし続けて離脱。CL出場権を逃した原因の1人となってしまいました。

2022/23シーズンは偽SBのスペシャリストともいえるジンチェンコの加入で出場機会を急激に減らしてしまい、偽FBとして出場した試合でもビルドアップで苦戦し、パスミスを連発するなどチームの足を引っ張る格好になってしまいました。

2021/22シーズンの中盤以降、偽FBの役割を経験していただけに今シーズンの落ち込みは予想外でした。強引に得点を奪いにいく場面、あるいはオープンな試合展開ではスコットランド人の走力や縦への突破力が求められる場面はあるはずです。スピードと一対一の能力に裏打ちされた対人守備能力も決して低くありません。新シーズンは中盤の再編にともなってDF陣の序列が変化すると予想されることから、チームに留まって復調してほしい気持ちはあります。ただし、選手が出場機会を求めるのも当然ですので、今夏に退団しても不思議ではありません。

 

4)冨安健洋

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2021年夏にボローニャから加入。対人守備能力や空中戦の強さにより、ベジェリンがACLを断裂して以来、チームのウィークポイントとなっていた右FBに守備の安定をもたらしました。大外を駆け上がってのクロスといった武器は持ち合わせていませんが、戦術理解度が高く、左FBで起用されても質の高いプレーをする点では素晴らしい守備のマルチローラーといえるでしょう。

懸念点は何といっても故障離脱の多さ。アーセナルに加入して以来、シーズン終盤の大切な試合で起用できないことがあまりにも多すぎます。シント=トロイデンでチームメイトだった遠藤航いわく「冨安は故障離脱が多いと何かを変えなきゃと言って車を買い替えてしまうようなナイーブな性格」らしいですが、プレーを見る限りそうした印象は受けません。アーセナルのみならず日本代表のためにも健康体を維持してポジション争いにも加わってほしい選手です。あと私服が YouTuber のブランドだとかでよく話題になりますが、人柄の良さが出ている感じでご愛敬ではないでしょうか。

 

5)ヌーノ・タバレス

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2021年夏にベンフィカから加入。走力やシュート力にものをいわせた攻撃参加が最大の持ち味ですね。2021/22シーズン序盤にティアニーが離脱してチャンスを掴んだ際に溌剌としたプレーを見せてファンの心を掴みました。しかし、その後は出場機会が減っていき、2022年1月のFA杯フォレスト戦では前半での屈辱的な交代。シーズン終盤に再度ティアニーの故障離脱でチャンスを出場機会を得ましたが、プレー選択が甘かったりミスを連発してメンタル面や試合経験の不足を露呈してしまいました。2022/23シーズンはマルセイユにローン移籍して主にWBとして出場。多くのゴールに絡む活躍をしましたが、監督からまたもや一貫性のなさを指摘されてしまいました。ポテンシャルだけならベイルのようなスケールを感じさせる素材ではありますが欠点があまりにも目立つため、今後、アーセナルのユニフォームを再びまとうことがあるかは不明な状況です。

 

6)セドリック・ソアレス

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2020年1月にサウサンプトンからローン移籍、同年6月に完全移籍で加入しました。冨安が加入した2021年夏以降は基本的にはベンチが定位置。故障者が出た場合にのみ出番が回ってくるスカッドプレイヤーでした。SBが本職でオーバーラップやWGのフォローを卒なくこなす一方で、フィジカルや対人守備能力における限界は隠せませんでした。セットプレーのキッカーを務めることも多かったのですが、コーチング・スタッフがセドリックに任せた理由を多くのファンが最後まで理解できませんでした(泣)。2023年1月にフラムにローン移籍。タバレスと同じく今後、アーセナルでの居場所があるかは不明な状況です。