アーセナルの選手名鑑 :No.6編

前回のCB編に続き今回は No.6編です。それでは Here We Go !!

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4.No.6

1)トーマス・パーティー

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2020年夏に紆余曲折を経て獲得した大型MF。2018年夏からコンタクトが始まり、常にプライオリティとしてリスト最上位にいたそうです。しかし、2019年夏はエメリがWGを希望したため獲得見送り。パンデミック直後の2020年夏も給与面で合意に至らず再度見送りかと思われましたが、移籍ウィンドウ最終日にアトレティコ・マドリードの虚をつく形で release clause を支払って移籍が実現。数日前までトレイラのローン移籍について交渉していただけに、先方がアーセナルの不義理を非難するのも致し方なしですね。

選手としての特徴を一言であらわすならロールスロイス。スピードとパワーを併せ持つと同時に、繊細なタッチやボディフェイントを駆使して相手のプレスをいなす最高レベルのタレント。

初年度はジャカとダブルボランチを組んでチームを後方から支えていましたが、その真価を発揮するようになったのは2年目の2021年12月にアンカーに固定されてから。それ以前のチームが抱えていた後ろの重さの解消に大きく貢献しました。ネガトラ時には持ち前のフィジカルを活かして相手のカウンターの芽を確実につぶし、保持の局面では相手のプレスにも動じずにターンでいなし、味方のレイオフを受けてロングレンジのパスを左右に届けます。ロングシュートは打てども打てども枠を大きく外し宇宙開発 (笑) の名を冠しましたが、今シーズンはNLDという最高の舞台で見事なシュートを決めて名誉挽回を果たしました。

プレミア・リーグでも屈指のアンカーの一人ですが、マンCのロドリと比較すると以下の点で見劣りする気がします。第一に、故障離脱が多く好不調の波も大きいです。2シーズン続けてシーズン終盤の大事な時期に離脱したり調子を落としたのは、30代に突入する年齢とも相まって今後の不安材料となっています。第二に、プレイ選択が少しリスキーな点も気になります。ショートパスでリズムを刻むよりも左右に大きく振るパスを優先しがちで、クローズドな展開に持ち込みたい場面でもゲームをオープンな展開にしてしまうことがあります。

今年の冬にジョルジーニョを獲得し、さらに現在は今後数年を託す中心選手としてデクラン・ライスの獲得に乗り出しているため、来季もアンカーのポジションを確保できるかは不透明となっています。アウェーの試合でブーイングを浴びる原因となった刑事事件もまだ決着が着いていません。移籍の噂がちらほら出ていますが残留するのであれば2023/24シーズンも主力選手であることは確実です。その起用法がどうなるかは要注目ですね。

 

2)ジョルジーニョ

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2023年冬の移籍市場でチェルシーから獲得。中盤底からゲームを組み立てるマエストロ。アルテタが以前からそのゲームメイクや試合を読む力を絶賛しており、2018年夏と2020年夏にも獲得を試みたほどです(注:2018年夏はマンチェスター・シティのアシスタントコーチとして)。

2021年にチェルシーと伊代表でCLとEUROを制し、バロンドール投票で3位に入ったほどの世界的名手。特徴は何といっても、狭いスペースでも怯まずにボールをもらいにいき、正確なショートパスをテンポよくつないだり、隙があれば楔のパスを入れる後方からのゲームメイクでしょう。紛れもなく世界最高の deep-lying-playmaker の一人です。 加入直後からピッチ上で味方に指示を出し続けるなど抜群のリーダーシップを兼ね備えています。その姿はまさにピッチ上の監督。他にもPKの名手であったり天性の陽キャであったりとポジ要素が多いですね。ジョジョとかジョル爺とかファンの間でもいろいろな愛称で呼ばれているようです。

懸念される点は主に2つ。第一に、スピードやパワーの不足に起因する守備の脆さ。特にネガトラ時に広大なスペースを一人でカバーする場合が危惧されます。今のところはポジショニングの良さを活かして大きな問題は起こしていませんが、30代へと突入して年齢によるフィジカルの衰えも心配されるだけに、トランジションの多い展開に持ち込まれた場合の不安は拭えません。パーティーなら潰せてたというシーンも散見されました。もう一つの懸念点は、得点力やクリエイティビティの不足。これまでのキャリアにおいてもPK以外で得点したのはごく僅かです。アストンヴィラ戦ではエミマルのOGを誘発する見事なミドルを放ちましたが、相手が引いて組んだブロックをこじ開ける特別な武器はなさそうです。トゥヘル・チェルシーでよく見られた「ボールを支配してゲームをコントロールすれど得点をなかなか奪えない展開」を打破できないのではないかと危惧されます。シーズン終盤はパーティーを押しのけて出場する機会も増えたので、来季の起用法が今から楽しみです。

 

3)モハネド・エルネニー

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2016年冬の移籍市場でバーゼルから加入しました。現在アーセナルに所属する選手の中ではもっとも加入時期が古い選手となります(注:1年間のローン移籍があり在籍年数だけならジャカとホールディングの方が長い)。カソルラの故障離脱でビルドアップが機能不全に陥った2015/16シーズンの後半、最多パス数を毎試合記録するなどビルドアップの安定化に貢献しました。ただし、横パスやバックパスが大半でライン間でパスを受けても前を向けないことから横パス王(?)と揶揄されていた記憶が...CLバルサ戦でのファインゴールも印象に残ってます。

その後はスカッドプレイヤーとしてカップ戦を中心に起用されてきました。転機となったのは1年間のローン移籍から戻ってきた2020/21シーズン。当初はアルテタのプランに入っていませんでしたが、中盤選手がほとんどいない状態でシーズンがスタートしてコミュニティ・シールドのタイトル獲得に貢献。開幕戦でも先発出場を果たします。以前より成長した姿をみせ、加えて、目玉補強のパーティーが故障で離脱することが多く、終わってみればプレミアリーグでアーセナル加入以来最多となる17試合の先発を果たしました。

当時チームに在籍したセバージョスと出場機会を分けあうことが多かったのですが、才能だけならエルネニーはスペイン人に遠く及ばないでしょう。向こうはレアル・マドリードで契約延長を勝ち取るほどの選手。しかしながら、当時のアーセナルにとって二人のあいだに大きな差はありませんでした。そうやって考えるとサッカーは不思議です。

2019/20シーズンにエメリから「出場機会はほとんどないが君がいるとチームの団結があがるからチームに留まれ」といわれたことからも分かる通り、プロフェッショナルでチームにコミットしている点で大変貴重なベンチメンバー。2021/22以降は故障者が出た場合にのみ出場機会が回ってくる立ち位置で、チームに特別なクオリティを加えることはありませんが、落ち着きをもたらす最低保証品質枠ともいえる選手。

上述のとおり前を向くターンやくさびのパスが得意でなく、運動量はあるものの動きが直線的で1対1の争いも強くはありません。選手が求められる技術水準があがってくる中、今後もエルネニーがチーム内で居場所を確保できるかが問われています。