アーセナルの選手名鑑 :CB編

前回のGK編に続き今回はCB編です。それでは Here We Go !!

Embed from Getty Images

2.センターバック

1)ウィリアム・サリバ

Embed from Getty Images

2019年夏にサンティエンヌから加入した本格派CB。2017年夏にエムバペを獲得すべく父親と交渉した際、🐢の代わりにと推薦されたとか...

試合経験を積むため 2019/20シーズンは引き続きサンティエンヌでプレー。しかし、自身の故障やシーズン中止により十分な出場時間を得られませんでした。それどころか、契約条項を盾に取ったアーセナルのドライな仕打ちによりリーグカップ決勝を欠場する羽目になり、さらには家族の不幸にも見舞われて、失意のうちにアーセナルへと復帰します。

2020/21シーズンはプレシーズンで十分アピールできず、再度武者修行にでることが決まりましたが、クラブの事務的なミスによりローン移籍が破談に...半年間を主にリザーブリーグで過ごしたのちに期限付きでニースに移籍しました。この一連の過程でアルテタとの関係が少しこじれてしまったそうです。

翌2021/22シーズンはチームとも相談の上、マルセイユに3度目のローン移籍。年間50試合以上に出場するばかりか、リーグ2位と躍進するチームの原動力としてリーグアンの最優秀若手選手賞にも輝きました。シーズン終了後にマルセイユが完全移籍での獲得を望み、本人も前向きだったようですがアーセナルがチームに戻すことを決断。4シーズン目にしてようやくプレミアリーグでデビューを果たします。その後の活躍については、皆さん、ご存じのとおりです。

そんなサリバですが実はHGプレイヤー。3度のローン期間中もプレミア・リーグのスカッドに登録されていました。Brexit の影響でルールが変更されたのでしょうか?すごく違和感があります(笑)。エムバペと同じく自らの能力に対する自信や自己プロデュース意識がきわめて高いようです。

選手の特徴としては 抜群のスピードと対人能力を誇る本格派CB といったところでしょうか。サリバの起用により保持局面での高いライン設定やネガトラ時のカウンタープレスが可能となり、2022/23シーズンの快進撃をもたらすチーム戦術のカタリストになりました。

欠点らしい欠点がなくそれがCBとしての最大の長所ともいえますが、特に称賛されるべきは冷静沈着なキャラクターでしょう。保持でも非保持でもピンチに慌てる様子を全くみせません。皆をびっくりさせるようなロングパスを通す訳ではありませんが、ボディアングルを変えながら持ち上がったり、後方でショートパスをリズムよくつなぎます。その能力やプレースタイルにより NEXTヴァラン とも呼ばれるべき存在です。カタールW杯にフランス代表として出場しましたが、今後は熾烈なレギュラー争いを制してスタメンの座を確保することが期待されます。

 

2)ガブリエル・マガリャンイス

Embed from Getty Images

2020年夏にリールから加入しました。パンデミックが直撃した難しい移籍ウィンドウでしたが、前年夏に二コラ・ペペのビッグディールを成立させていたこともあり、比較的スムーズに交渉がまとまりました。

加入当初はビルドアップにおける貢献が不安視されたり、周囲との連携面でパブロ・マリの後塵を拝する時期も一時的とはいえありました。しかし、今ではリーダーシップも兼ね備えた押しも押されぬDF陣の大黒柱。スピード・パワー・対人能力が非常に高いレベルでまとまっています。セットプレーからのヘディングもチームの重要な武器の1つ。ビルドアップでもボールをもって持ち上がるのが上手く、押し込む試合では敵陣のペナルティエリア付近まで攻めあがることも増えてきました。2022/23シーズン終了時点でプレミア・リーグ73試合連続出場中という耐久性も素晴らしいです。

試合中に熱くなりやすく不用意なファールでカードをもらいがちな点は少し気がかりですが、退場さえしなければサリバと好対照でよいのかもしれません...サリバと比べると過去の名DFが纏っていた ”相手を上から目線で観察している” かのようなオーラが少し見劣りする気がします。

 

3)ロブ・ホールディング

Embed from Getty Images

2016年夏にボルトンから加入。クラブ在籍年数でいうとジャカとともに最古参の選手といえます(1年間、ローンで外にでていたエルネニーを除く)。ピッチ外でのふるまいが高く称賛されるチームのリーダーシップ・グループのひとり。

エメリが就任した19/20シーズン前半にレギュラーの座を掴んだかに思われましたが、ACL断裂の重傷を負い、それ以降はスタメンとベンチを行き来するスカッドメンバーで徐々に出場機会を減らしてきています。

突然出番が回ってきても一定のパフォーマンスを示す点ではコスパ最高のスカッドメンバーともいえます。しかし、足もとの技術やプレス耐性がサリバやガブリエルに対して明らかに劣り、過去2シーズンは誰かが故障離脱しなければスタメンの座が回ってこなくなりました。2シーズン続けてシーズン終盤の重要な試合において力不足を露呈してしまったのも残念です。後退し続ける生え際を魔改造して踏みとどまったように、ビッグタイトルを狙うチームにおいて今後とも居場所を確保できるかが問われています。

アーセナルでのハイライトは何といってもディエゴ・コスタとのバトルではなく2016/17と2019/20のFA杯決勝でしょう。いずれも3バックのRCBとして出場しました。特に2016/17のチェルシー戦の相方はメルテザッカー・モンレアルという急造トリオ。スカッド・プレイヤーでありながら重要な2試合で結果を残してくれた事実は永遠に失せません。仮に退団する日がきても二度の優勝に貢献してくれたことへの最大限の賛辞とともに送りだせます。

 

4)ヤコブ・キヴィオル

Embed from Getty Images

2023年1月に加入したばかりの左利きCB。デビュー戦では途中出場した直後のプレーでいきなりボールを後ろにそらしてファンを不安に陥れました(笑)。しかし、チェルシー戦以降は左利きの右CBとして起用され、ボール保持の場面での落ち着きや、ボディアングルのスムーズな変化によるパスコースの確保などで好印象を与えました利き足が左であることもビルドアップの場面で3-2-5の真ん中に入ることが多かったせいか特に気になりませんでした。

セリエAではボランチとしても出場していたため、アーセナルでもポリバレントな活躍が期待されます。ポーランド代表としてカタールW杯にも出場しましたが、CBとDMFの両方をできる長身選手ということで、かつてアーセナルにも在籍したクリスティアン・ビエリクを彷彿させます。左FBでの起用は不発に終わりましたが連携を深めればまた試されるかもしれません。マガリャンイスの壁は厚いですがシティのアケのように出場機会を増やしていってほしいですね。

5)パブロ・マリ

Embed from Getty Images

2020年1月にローン移籍、同年6月に完全移籍で加入しました。代理人がエメリと同じ人物で前FDのラウール・サンジェイと昵懇の関係、負債のストレステストの実施時期との兼ね合いもあり、変則的な買取OP付きローンでフラメンゴから加入しました。

マンチェスター・シティに加入後、ローンでいくつものクラブを渡り歩いた苦労人です。アーセナルでは、左足のロングフィードやピッチ上で味方に声を張り上げて指示を出すリーダーシップが高く評価されていました。下の動画でも自身の役割は守備陣のリーダーであると自覚しており責任感の強さが窺えます。

2020/21シーズンにマガリャンイスがCOVID-19に感染して離脱した時期に出場機会を掴みましたが、スピードやボール保持の場面での持ちあがりなどが物足りず、基本はベンチメンバーでした。2021/22シーズン後半にウディネーゼ、2022/23シーズンにモンツァへとローン移籍。後者では殺傷事件に巻きこまれて大けがを負ってしまいましたが、チームのセリエA残留にしっかり貢献して完全移籍を勝ちとりました👏 アーセナルでの最大のハイライトが「ルカクの引き立て役」(2021/22シーズン第2節)だったのは少し残念ですが(笑)、セリエAで確固たる地位を掴んでほしいです。